タイ北部・ワンパイ村 / タイ・ルー族
ワンパイ村での暮らし
まさか家族旅の途中で、村の人たちが何年も前からやりたかったことを、一緒に始めることになるとは思っていませんでした。
僕たちがワンパイ村に来たきっかけは、コック川の汚染が背景にありました。
つい最近までここで魚をとり、乾季には生活用水として使い、観光客を乗せて川下りもしていたそうです。
まさに、村の暮らしそのものだった川。
ところが今、その景色が大きく変わっています。
2年前の大洪水以降、上流のミャンマー側で進む鉱山開発の影響が疑われ、水質汚染が大きな問題になっているそうです。
村長さんの話では、ヒ素や水銀、カドミウムなども検出され、以前のように川の水を使うことができなくなった。
釣りも、川下りも、できなくなった。
「政府がなんとかしてくれるのを待つだけでは、暮らしていけない」
村の人たちは、自分たちで山から水を引き、生活に必要な水を確保しています。
そして来月。
この川の問題を調べ浄水の支援をするため、日本から調査団がこの村を訪れることになったそうです。
そこで友人が村長さんづてに
「日本の人たちが来るから、子どもたちに日本語を教えてほしい」
と声をかけてもらったことでした。
そして、僕たち家族と友人はワンパイ村の村長さん宅にお世話になりながら日本語や日本文化を現地の子たちに教えることになりました。
「こんにちは」
「ありがとう」
「ワンパイ村へようこそ!」

みんなで声に出して練習して、相撲をして、綱引きをして、最後は阿波踊りまで。笑
日本の文化を伝えに来たはずが、気づけば僕たちのほうが、この村からたくさんのことを教えてもらっていました。
村長さんの家でこんにゃくを作ったり、長男はチャインさんたちと一緒に配達へ行ったり。
ジョイさんは毎日のように、タイ・ルー族に伝わる料理を作ってくれました。
これが、ホントに美味しくて。
同じ食卓を囲みながら、「これ何が入ってるんですか?」なんて聞く時間も、すごく好きでした。

そして、村で大切に受け継がれてきた伝統の織物までいただきました。
きれいな布をもらった、というより、この土地でずっと受け継がれてきたものを少し分けてもらったような気がしました。
この村で暮らしていて感じたのは、みんなが自分たちの文化にちゃんと誇りを持っていること。
料理も、織物も、言葉も、祈りも、祭りも。
暮らしの中に普通にある。
便利になって、世界中どこにいても似たようなものを食べて、似たような暮らしができる時代。
その一方で、
「自分たちはどこから来たんやろう」
「この土地で何を大切にしてきたんやろう」
そんなことを知る機会は、少しずつ減っているのかもしれません。
タイ・ルー族の子どもたちに日本の文化を伝えながら、
「じゃあ僕たちは、日本の子どもたちに何を手渡していけるんやろう」
と、逆に考えさせられました。
Earth Family Journeyでやりたかったのは、世界のいろんな場所に「おかえり」「ただいま」と言い合える関係をつくること。
そして、自然や暮らしを守る知恵を、その土地の人たちと学ぶこと。
ワンパイ村で過ごしながら、
「ああ、こういう旅がしたかったんやなあ」
と何度も思いました。

素晴らしい文化に出会い、子どもたちと一緒に時間を過ごすことで、失われつつあるものを、「大切だから残そう」と言うだけじゃなく、一緒に楽しみながら次の世代へつないでいく。
そんな小さなきっかけに、僕たちの旅もなれたらうれしいです。
村長として本当に忙しいはずなのに、僕たち家族のために何度も時間をつくってくれたチャインさん。
一緒に暮らしながら、料理も仕事も村の日常も教えてくれたジョイさん。
そして、当たり前のように僕たちを迎えてくれた村のみなさん。
村を離れてからも、家族で何度もみんなの話をしています。
次に帰るときは、もっとタイ語を覚えていたい。
そしてまたみんなに会って、笑って「ただいま」と言える時を楽しみにしています。